・牛久保の若葉祭が奇祭たる所以はどこにあるか(柴田晴廣)

 

「奇祭」とは、辞書的には、独特の習俗をもった風変わりな祭りをいう。
  
笹踊の囃子方の「ヤンヨウガミ」が寝転ぶのが珍しいからと紹介されることが多いが、同じ豊川市の大木や新城の大宮の笹踊の囃子方も寝転ぶ(牛久保のように起こしてもらうまでは起き上がれないというルールはない)
  
なお「若葉祭」の通称「うなごうじ祭」の「うなごうじ」は「尾長蛆」の方言であり、この寝転ぶ姿が「蛆虫」に似ることから付けられたと市のホームページなどで紹介されているが、郡制下の寶飯郡で、「うなごうじ」という方言が使われていたという資料はなく、「うなごうじ」は「蛆虫」のことというのは、まったくの妄説である。
 
つぎにその「笹踊」、用語集にもあるように東三河で19箇所(ほか東三河の笹踊の影響を受けたと考えられる笹踊が旧額田町石原で奉納される)で行われている。豊橋の祇園を始め20箇所近くで行われているわけで、東三河では珍しいものではないが、芸能の完成度としては牛久保が高い。

「隠れ太鼓」、これも牛久保のほか、同様に「笹踊」が行われる豊川と小坂井で行われる。かつては豊橋の吉田神社でも行われていたようだ。ただ人形と見紛うのは、牛久保のみで、これも芸能の完成度としては、他を圧している。

「神兒」については、男児が水干に緋袴、さらにはオスベラカシという女装で巫女に扮するのは、全国的には珍しい。ただ東三河では鬼祭りを始め、三谷祭などポピュラーだ。しかし巫女の姿で男児が舞う「神兒舞」については、「笹踊」や「隠れ太鼓」と同様、芸能の完成度は頭一つ抜けている。

 

 

このように、一つひとつの出し物は、東三河ではさして珍しいものではないが、芸能の完成度が群を抜いている点、そしてこれとの対比で寝転ぶ一団がいるのが、「若葉祭」を奇祭とする所以だろう。

「三ツ車」が必見というのも、完成度の高い民俗芸能が凝縮され、それらがすべてを同時に見られるからである。